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第32回先端技術大賞 斬新発想 持続可能な発展導く 東大大学院・照月さんや東レなど表彰

(2018/7/11 東京・元赤坂 明治記念館)

授賞式後のレセプションで、経済産業大臣賞を受賞した東レの増田正人氏から研究の説明を受けられる高円宮妃久子さま=11日午後、東京・元赤坂の明治記念館

優れた研究成果を挙げた理工系学生や企業・研究機関などの若手研究者を表彰する、フジサンケイビジネスアイ主催の「第32回 独創性を拓く 先端技術大賞」(後援・文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、ニッポン放送、産経新聞社)の授賞式が11日、高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。

先端技術大賞は科学技術創造立国の実現に向け、最先端技術の研究に励む若者の独創性を育み、勉学・研究への意欲を高めて世界のひのき舞台で活躍する人材を創出するのが狙い。

式典では、昆虫の嗅覚機能を利用した匂いセンサーの研究に取り組んだ東京大大学院の照月(てるつき)大悟さんに、学生部門のグランプリに相当する「文部科学大臣賞」が、超精密な複合断面の形成を可能とする革新的な紡糸技術「ナノデザイン」の研究開発で成果を残した東レには、社会人部門の最高賞「経済産業大臣賞」が、それぞれ贈られた。

このほか、深紫外LED(発光ダイオード)や安心・安全な水環境につながる排水の処理技術など6件の研究も顕彰。各賞受賞者に賞状と副賞の研究奨励金が贈られた。

審査委員長を務めた日本工学アカデミー会長の阿部博之・東北大名誉教授は「特定の学問に当てはめることができない複合的かつ高水準の研究が数多く見られた。学生部門では斬新な発想やユニークな着想に加え、AI(人工知能)などの研究も目立った。社会人部門では、既に私たちの生活に浸透している技術や製品の研究開発、材料、エレクトロニクス関連の技術が多かった」と講評した。

その上で、「科学技術は未来への夢を与えてくれるだけではなく、持続可能な人類社会の実現にとっても、その発展は必要不可欠。若い研究者の皆さんが世界を舞台にさらに活躍されることを祈念する」と述べた。

■高円宮妃久子さまのお言葉

高円宮妃久子さま

「第32回独創性を拓く先端技術大賞」授賞式でお言葉を述べられる高円宮妃久子さま=11日午前、東京・元赤坂の明治記念館(酒巻俊介撮影)

まずは西日本で発生した「平成30年7月豪雨」により被災された方にお見舞い申し上げます。亡くなられた方々をお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々が一日でも早く平穏な日常を取り戻されるよう願っております。

本日、「第32回 独創性を拓く 先端技術大賞」の授賞式にあたり、皆さまとご一緒できますことを大変うれしく思います。このたび、受賞された皆さま、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

科学技術がめざましい発展を続ける現代において、日本の独創的な先端技術の研究開発は、世界でも大変高く評価されており、科学技術やイノベーションは2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成するためにも重要な役割を果たすことになるでしょう。こうした中、今回も若い研究者の斬新な発想と、それを実現しようとする力強い信念、情熱を強く感じることができ、積極果敢にチャレンジしていく柔軟な頭脳と独創性あふれる思考能力に感心いたしました。また、社会に役立つ製品や技術をさまざまな形で実現された研究者、開発者の創意工夫に、心より敬意を表したいと思います。

先端技術の研究開発は、私たちの安全や健康、衛生など日常的な暮しを根本から支えています。そして、先端技術の研究開発過程で得られたデータはまさに人類の財産・知的資源であり、その質の高さは「技術立国日本」の国力とも言えます。刻一刻と変化する世界情勢に瞬時的確に対応し、わが国を守り、明るい将来を築いていくためにも、一見目立たない、地道な研究開発の積み重ねに、大いに投資していく必要がありましょう。

戦後、私たちは安全で豊かに暮らす幸せを当たり前のことと考え、平和な時代を享受してきました。しかし、諸外国と日本の関係は「力関係」あっての「友好関係」であるということをしっかりと理解する必要があります。同僚であろうと国と国であろうと、友好関係を保つためには常に努力が必要です。世界平和は、何もしないで、当たり前にそこに留まってくれるものではありません。国民の平穏を守るにも科学技術は欠かせません。

科学技術分野では解明を待つ研究領域がまだ数多くあり、若い方々の独創性あふれる研究に期待したいと思います。

科学技術の力をもって多くを変えることができますが、それがゆえにそれを実用するときの人間の資質が問われます。大惨事につながることも想定できますので、本日ご出席の大学や研究機関、企業、新聞社やテレビ局の皆さまには、家庭や教育の現場、そして社会において、将来を背負ってたつ若者を、しっかりとした理念をもつ人間に育てていただくよう今一度お願い申し上げます。そして、将来を担う人材を育てる土壌としての国づくりに力を尽くしていただければと存じます。

本日は、科学技術の素晴らしさに改めて思いを致す機会をいただき、ありがとうございました。皆さまの研究がさらに充実、発展していくことを心より願い、また今後のご活躍を祈念して式典に寄せる言葉といたします。


高円宮妃久子さまを囲み、記念写真に納まる先端技術大賞の受賞者。前列左端は審査委員長を務めた阿部博之氏=11日午後、東京・元赤坂の明治記念館

受賞励み 新たな飛躍へ意欲

授賞式で宮川典子・文科大臣政務官(中央)から文部科学大臣賞の賞状を授与される東大大学院の照月大悟さん=11日午前、東京・元赤坂の明治記念館

授賞式では、桐蔭横浜大医用工学部特任教授で東大先端科学技術研究センターの宮坂力フェローが記念講演を行った。

宮坂氏は「ペロブスカイト」という特殊な結晶構造の材料を使った、日本発の次世代型太陽電池を世界に先駆けて発掘した。とくに海外では、同技術をベースとした、さまざまな製品の応用研究が進んでいる。

宮坂氏は自身の経験を踏まえ、「チャレンジしようと思ったものについてはしつこく取り組んでほしい」と強調した上で、「恥ずかしがらず協力を得るようにすることも重要」と若手技術者にエールを送った。

授賞式に続いて開かれたレセプションには約200人が出席した。冒頭、文部科学大臣賞を受賞した東大大学院の照月大悟さんがあいさつ。昆虫の嗅覚を活用した技術に取り組んだにもかかわらず、「昆虫を触るのは今でも苦手」と会場をわかせた後、独創性やひらめきを大事にしていきたいと改めて決意を示した。

会場には研究成果を紹介したパネルが飾られ、高円宮妃久子さまは受賞者の説明に熱心に耳を傾けられた。照月さんはデモンストレーション用に蚕を持ち込んだ。久子さまは蚕に親近感を持たれているそうで、メカニズムなどについて熱心に質問された。

経済産業大臣賞を受賞した東レの増田正人さんは、布を使って同社が開発した紡糸技術の優位性を説明。抗菌性や癒やし効果などを付加できる点に関心を持たれたそうだ。

産経新聞社賞を受賞した東北大の大森俊洋准教授らは、ゴムのように曲がって元通りに復元する合金棒を実際に試してもらった。建物の部材として活用することで震災時の免震に役立つといい、久子さまは「早く実用化できるといいですね」と声をかけられた。

一方、受賞を励みとして新たな飛躍を誓う声も相次いだ。フジサンケイビジネスアイ賞を受賞した情報通信研究機構の井上振一郎さんは「深紫外LED(発光ダイオード)はがんの早期発見にもつながる技術なので、どんどん普及させていきたい」と意欲を示した。

再生可能エネルギーの有効活用に結びつく技術でフジテレビジョン賞を受賞した真鍋亮さんは、大手化学メーカーに入社後もその応用技術の研究に取り組む。今度は「社会人部門として受賞できるような研究開発を進めていくこと」が目標だ。



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