受賞者紹介

受賞者紹介

第32回地球環境大賞 受賞者

地球環境大賞

森ビル株式会社

「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」と「麻布台ヒルズ」が開業
~豊かな緑地空間と再エネや廃棄物のための先進システムを設置~

経済産業大臣賞

株式会社リコー

30年にわたるサステナビリティ活動の集大成、最先端の環境配慮型複合機を発売

環境大臣賞

東レ株式会社

「水処理膜」技術で世界の水不足に貢献
~100カ国以上の水処理プラントで採用~

文部科学大臣賞

宮城県農業高等学校

「#ZERO マイプラ法」を開発
~プラスチック肥料の使用をゼロへ~

国土交通大臣賞

鹿島建設株式会社

カーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM®」
導入拡大によるCO2削減寄与

農林水産大臣賞

岩国市神東地先リサイクル資材活用藻場創出プロジェクトチーム

産学連携チームがリサイクル資材で藻場・生態系の創出活動

総務大臣賞

西日本電信電話株式会社

森林・林業DXによるカーボンニュートラル社会の実現へ
~自然資本の循環型社会の実現~

日本経済団体連合会会長賞

ユニ・チャーム株式会社

「使用済み紙パンツの水平リサイクル」による消費されない消費財の実現をめざす

日本商工会議所会頭賞

株式会社エコリング

個人のリユースでのCO2排出削減量を伝える「エコパラメーター」機能をアプリに搭載

フジサンケイグループ賞

積水化学工業株式会社

建てる時も建てた後も、地球環境に配慮した「セキスイハイムの循環型モデル」

奨励賞

株式会社ドコモビジネスソリューションズ

離島発×全国初、「持続可能な」スマート棚田農法の実証

奨励賞

株式会社不動テトラ

地盤改良と同時に地中に炭素を貯蔵する「ネガティブエミッション技術」

第32回地球環境大賞 受賞内容

大賞

森ビル株式会社

「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」と「麻布台ヒルズ」が開業
~豊かな緑地空間と再エネや廃棄物のための先進システムを設置~

同社グループは環境理念に、「Vertical Garden City=立体緑園都市」を理想とする「街づくりとその運営」を通じて、“都市と自然の共生”、“都市の脱炭素化”、“資源循環型の都市”を推進し、未来へつながる持続可能な社会の実現に貢献することを掲げている。

東京都港区の「虎ノ門ヒルズ」は 「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」が2023年10月に開業し、完成形となった。同年11月には「麻布台ヒルズ」が開業。両ヒルズは1986年竣工の「アークヒルズ」以降、都市における緑地の創造に積極的に取り組む系譜を引き継いでいる。

「虎ノ門ヒルズ」は屋上庭園や階段状のテラスなどの豊かな緑地空間に加え、生物多様性に配慮した緑や小川を創出。「麻布台ヒルズ」は約2万4,000m²の圧倒的な量の緑を確保した。

また緑地を活用したコミュニティづくりや環境教育にも取り組み、ヒートアイランド現象の緩和や生態系保全など、都市が抱える課題の解決にも寄与している。

両ヒルズの街区へ供給される電力は全て再生可能エネルギー由来であるのに加え、「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」および「麻布台ヒルズ」の入居テナントに対しては、トラッキング情報を記載した再エネ証拠書類を自動的に頒布するシステムを導入する。

廃棄物の総量削減に向けて、「麻布台ヒルズ」ではテナント・分別ごとの廃棄物量を可視化するWebシステムを構築。「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」などにも順次導入していく予定である。

経済産業大臣賞

株式会社リコー

30年にわたるサステナビリティ活動の集大成、最先端の環境配慮型複合機を発売

同社・グループは1994年、循環型社会実現のコンセプトとして、持続可能な社会実現のコンセプトとして、リコーグループの領域だけでなく、その上下流を含めた製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らしていく考え方「コメットサークル」を制定し、約30年にわたりサステナビリティ活動を継続してきた。

その集大成ともいうべき最先端の環境配慮型複合機として、2023年2月に「RICOH IMC6010」はじめ7機種16モデルを発売した。

A3複合機で業界トップとなるプラスチック回収材の使用率約50%(重量比)、低融点トナーの採用による消費電力低減などで、ライフサイクル全体でのカーボンフットプリントを約27%削減(従来機比)、年間約8万8,000tのCO2削減効果などを実現し、サーキュラーエコノミー時代のものづくりを実践した。

環境大臣賞

東レ株式会社

「水処理膜」技術で世界の水不足に貢献
~100カ国以上の水処理プラントで採用~

同社は、「2050年に目指す4つの世界」を目標に掲げ、その1つとして「安全な水・空気を届け、環境負荷低減に貢献する」という課題に取り組んでおり、海水や下廃水などの様々な水を、求められる水質に変えて供給し、世界の水不足の改善に貢献している。

同社は、海水を真水に変える要素技術である「水処理膜」の研究を1968年に開始し、2000年代には数十万人規模に飲料水を供給できる海水淡水化プラントの中核技術として用いられるようになった。

最近では下廃水の再利用に活用する動きもあり、米国サンディエゴ市のプロジェクトでは、2035年までに水需要のほぼ半分の約31万t/日を下廃水の再利用で賄う計画である。

同社は、全膜製品を有する総合膜メーカーで、全ての膜を自社開発する。現在、世界に35カ所の販売拠点、6カ所の製造工場、4カ所の研究開発拠点を有し、同社の「水処理膜」は世界100カ国以上の水処理プラントで用いられ、累積出荷量を水量換算すると、RO膜(逆浸透膜)だけで1.2億t/日となっている。

同社グループは、サステナビリティ目標の一つとして、「水処理膜」により新たに創出される年間水処理量を、2013年度の処理量(2,723万t/日)を基準に、2030年度は3.5倍まで拡大させる目標を掲げており、2022年度時点で2.5倍を達成した。

文部科学大臣賞

宮城県農業高等学校

「#ZERO マイプラ法」を開発
~プラスチック肥料の使用をゼロへ~

同校は、水田用の緩効性肥料のコーティングに使われているプラスチックの殻が水田から川、海へと流されてマイクロプラスチックとなり、海洋の生態系や環境に悪影響を及ぼすと考え、2020年からプラスチックを使用しない水田肥料の研究と開発をフクダ物産株式会社、多木化学株式会社と共同で行なった。

同肥料はすでに2社で商品化され、2023年に農家での使用が始まった。

同校はコーティングが駄目であれば、「溶けるのが遅い肥料を使えばいい」と考え、ウレアホルムという肥料に着眼。フクダ物産がウレアホルムを含んだ水田用の肥料を作り、同校で溶出実験、EC試験、コスモスの生育調査、水田の生育調査、米の収量調査、食味調査を詳細に行った。結果、水田で十分な効果が認められ、プラスチックカプセルの使用ゼロで米を作ることに成功した。

同校はこの栽培方法を「#ZERO マイプラ法」と名付け、情報を発信。全国100万haの水田で使われる肥料のプラスチックの殻が1万2,000tでペットボトル6億本分に相当することも算出、見える化した。

2023年1月にはプラスチックを使用した肥料を2030年までにゼロにする取り組みが全国で開始された。

同校は今後、地元である宮城県に適したウレアホルムの研究や食品会社と連携して新たなコーティング肥料の開発を行なっていく。

国土交通大臣賞

鹿島建設株式会社

カーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM®」導入拡大によるCO2削減寄与

同社は、地球温暖化防止および持続可能な社会の実現のために、コンクリートがCO2と反応する“炭酸化反応”に着目して、コンクリートに大量のCO2を吸い込ませて固定化する技術として「CO2-SUICOM®」(シーオーツースイコム)を2008年にデンカ株式会社、中国電力株式会社、ランデス株式会社(後に参画)と共同開発した。

これは、コンクリートが固まる過程で周囲のCO2を植物のように吸い込むことで、コンクリート製造時のCO2排出量をネットでゼロ以下に、つまり大気中のCO2を減少させるカーボンネガティブコンクリートである。

近年、「CO2-SUICOM埋設型枠」などとして構造物への導入が拡大するなど、同社が2000年頃から炭酸化反応によってコンクリートの緻密化と化学的安定性の向上が図れることを検証・実証すべく研究開発を進めて以来、20年以上を経て、本技術は本格的に社会実装されつつある。

2022年には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業」で、同社を中心とするコンソーシアムが「CO2-SUICOM®」などを基幹技術として提案した開発内容が採択された。

今後、2030年までの長期にわたり技術開発を行うため、同社を代表幹事企業とする、44企業、11研究機関からなる超大型コンソーシアム「CUCO®」(クーコ)が組成されている。

農林水産大臣賞

岩国市神東地先リサイクル資材活用藻場創出プロジェクトチーム

産学連携チームがリサイクル資材で藻場・生態系の創出活動

世界有数の豊かな海であった瀬戸内海で藻場の減少が進行し、餌生物の減少、有用水産種の漁獲高減少が進行している。

神代漁業協同組合(山口県岩国市)を主体とする宇部工業高等専門学校、JFEスチール株式会社の3者による産学連携チームは2012年度から、「岩国市神東地先におけるリサイクル資材を活用した藻場・生態系の創出プロジェクト」を進めている。

藻場資材には天然石ではなく、鉄鋼製造工程で生まれるリサイクル資材「マリンストーン」を用いた藻場の創出をめざし、2013年から2018年の間に約12万4000m3のマリンストーンを投入した。

結果、これまでに計3.6haの藻場を創出し、クロメやアカモクなど海藻、ゴカイや甲殻類などの底生生物の着生を確認した。

魚類は2012年11月には 9種類14個体だったが、2019年9月には9種類42個体と増加した。

これまでの海藻草の着生量をもとに、ブルーカーボンによるCO2吸収量を算定し、計79.6t(年平均約20t)のJブルークレジット認証を受けた。

海藻藻場と海草藻場によるCOD(化学的酸素要求量)の浄化量は14.4tと推定される。

創出された藻場やその周辺の海域は、地域住民や子どもたちの環境啓発および教育の場や学生の研究フィールドとして活用している。

総務大臣賞

西日本電信電話株式会社

森林・林業DXによるカーボンニュートラル社会の実現へ
~自然資本の循環型社会の実現~

日本の森林の持つ多面的機能を発揮するには、主伐・再造林の促進など健全なライフサイクルによる適切な森林管理が求められるが、そこには担い手不足や放置林など様々な課題がある。

同社と地域創生Coデザイン研究所は「森林・林業DX」を通じ、デジタル技術を駆使した森林情報の計測‧解析や地域情報の重ね合わせによる効率的な森林経営や国産材の活用を促進している。さらには、森林由来のカーボンクレジットで新たな価値の創出、流通を行っている。

また、産官学・金融のパートナーとの共創で、地域の脱炭素化と企業のカーボンオフセットによって、森林への新たな資金還流の仕組みを作り、持続的なカーボンニュートラルの実現に寄与している。

例えば、森林所有者に対して自身の山林の場所や資産価値、CO2吸収量を可視化してパソコンやスマートフォンなどで提供することで、森林の価値向上に向けた間伐や下刈りの施業依頼などにつなげている。

また、民有林の約9割を占める小規模所有の山林を集約した J-クレジットの創出・認証を成功させ、地域企業や金融機関と連携しての販売を近く予定している。

日本経済団体連合会会長賞

ユニ・チャーム株式会社

「使用済み紙パンツの水平リサイクル」による消費されない消費財の実現をめざす

生理用品や紙おむつ、マスクなどを製造・販売し、世界80を超える国・地域で事業展開し、世界シェア第3位、アジアでのシェア第1位をほこる同社は、「使用済み紙おむつのリサイクル」技術の開発に取り組み、2015年に使用済み紙パンツの水平リサイクルプロジェクトを開始した。

独自技術として「オゾン処理による滅菌技術」を確立しており、2016年に鹿児島県志布志市と、2018年に同県大崎町と共同で実証実験を開始している。現在、実証実験設備では、年間約500tの使用済み紙おむつをリサイクルできる。

2022年5月には使用済み紙おむつの「水平リサイクル」によって抽出・精製したパルプを原材料に使用した商品「ライフリーRefF 横モレ安心テープ止め」の「Mサイズ」を製造・販売し、現在は南九州地区の約60の介護施設で使用されている。「Sサイズ」と「Lサイズ」は2023年10月上旬より発売開始した。

また2022年11月、同県志布志市内の小学校で「使用済み紙おむつリサイクル」をテーマとした特別授業を実施。同年12月、リサイクル・プラスチックを「紙おむつ専用回収袋」へ再生する取り組みを開始して、大崎町より住民組織である衛生自治体会を通じ、15集落に無償配布した。

日本商工会議所会頭賞

株式会社エコリング

個人のリユースでのCO2排出削減量を伝える「エコパラメーター」機能をアプリに搭載

同社は、日本およびアジア地域でリユース事業(買取・販売)を営み、「モノは使い終わって不要になったら、ゴミ箱行きではなく、リユース・リサイクルをすることが当たり前」との価値観が広がる循環型社会づくりを目指している。

同社のサービスを利用する方法の一つとして、同社はスマートフォンで使用する公式アプリとして「エコリングアプリ」を提供してきたが、同アプリの新機能として2022年11月から、個人のリユースでのCO2排出削減量を伝える「エコパラメーター」を業界で初めて実装した。

顧客がエコリングへ品物を売り、リユースに参画することで排出抑制されるCO2量は画面を通して確認できる。CO2削減量は同社が主に取り扱う品物を分類し、品物で用いられている素材から「LCIデータベース IDEA version 2.3」を使用し、気候変動の影響評価値を算出して求める。

測定の対象となる品物は、服、バッグ、香水、コスメなど6 品目。2023年9月時点でエコパラメーター参加者数は1万1863名、2023年10月16日時点のエコパラメーターを使いリユースで削減したCO2実績は総合計で754.02tとしている。

フジサンケイグループ賞

積水化学工業株式会社

建てる時も建てた後も、地球環境に配慮した「セキスイハイムの循環型モデル」

住宅業界は、家庭部門のCO2を2030年に2013年比で66%削減という目標がある一方、建設技能労働者の減少傾向と空家の増加傾向という社会問題を抱えており、住宅での再生可能エネルギーの活用拡大や建設方法の最適化、長寿命化・資産価値の維持等が問われている。

同社は1997年に太陽光発電搭載住宅を販売開始し、蓄電システムやスマートハイムナビ等を加え、エネルギー自給自足型住宅の開発・普及を進めて来た。さらに現在、住宅の建設・生産時および不要・廃棄時の段階でのCO2排出量の抑制により、住宅の一生を通じて地球環境に配慮する「セキスイハイムの循環型モデル」に取組んでいる。

具体的には、住宅オーナーから買取った「スマートハイムでんき」の非化石価値や工場内太陽光発電設備等により、住宅生産工場(10工場)の全電力の再エネ化を2022年度に達成した。

同社住宅のオーナーから買取った住宅をリフォームし、「新しい価値」を付加したアップサイクル住宅「Beハイム」の販売を進めている。オプションとして、太陽光発電システムや蓄電池などの設備の搭載もできる。2022年度の販売件数は130棟で、2030年には500棟を目指している。

この他、同社は、住宅では解決しきれない社会課題に対しては、まちづくりの展開や技術進化での解決を目指して展開している。

奨励賞

株式会社ドコモビジネスソリューションズ

離島発×全国初、「持続可能な」スマート棚田農法の実証

新潟県佐渡市は朱鷺の保護と放鳥などで、2011年に日本で初めて世界農業遺産(GIAHS)に認定された新潟県の離島である。

同社は佐渡市において、平野部の水田よりも管理に労力を要する棚田で水稲の減農薬栽培、無農薬・無化学肥料栽培を推進するため、ICTを活用した「高度水管理システム」、「水田除草ロボット」、「ドローン空撮による3D畦畔マップを活用した畦畔草刈機の選定」などを実証中である。

具体的には、生産者、自治体、教育機関、研究機関、パートナー企業などと共創して推進している。ICTの活用により、減農薬栽培、無農薬・無化学肥料栽培の推進に向けたコスト低減、労力軽減、収益向上などを検証している。

また2023年度は、取得データのシェアリングの実証を開始するとともに、他地域・他作物への展開など、さらなる挑戦をしている。

棚田地域は、生産者の高齢化、担い手不足が顕著に表れており、これは日本農業の社会課題である。同社は、ICTやAI等を活用したスマート農業を確立させ、活路を見出していく。

奨励賞

株式会社不動テトラ

地盤改良と同時に地中に炭素を貯蔵する「ネガティブエミッション技術」

同社は、地震時の液状化対策を行うと同時に、炭素を地盤中に貯蔵する技術を開発している。これは、同社が1956年に世界で初めて開発し、液状化対策として最も実績の多い、「サンドコンパクションパイル(SCP)工法」を活用し、SCPで通常使用している砂の代わりにチップ状に粉砕した竹とコンクリート廃材をリサイクルした再生砕石を混合した「バイオマス混合材料」を地中に打ち込む技術である。

竹の利用は、各地で「竹害」 を引き起こしている放置竹林の有効活用も兼ねている。実証実験では、従来の砂杭と同程度の強度と出来形が得られ、炭素貯蔵を確認した。

CO2排出量削減効果について試算では、材料の採掘・製造から運搬、重機を使った地盤改良の施工、残土の搬出等で発生するCO2排出量に対し、「バイオマス混合材料」の埋設を比較すると、約600%のCO2排出量削減効果が見込まれ、トータルで「ネガティブエミッション技術」となっている。